2008年5月期「庖丁のねじれ」
 

 

庖丁のねじれ

価格的に安価な庖丁には”ねじれ”を生じた庖丁があります。
過去に、職人さんから「鍛冶屋がしっかり締めればねじれない!」と聞いたので、
鍛冶屋が叩き込めば、鋼がしっかり締まった庖丁になるのだと思っていました。

この事は、全くの間違いではなく、庖丁を叩いて伸ばすのではなく、ローラーなどで
ギュ〜ンっと伸ばした物などは、叩いた庖丁よりも締まってない事は容易に考える事が出来ます。


何故に。。今ごろになって”ねじれ”がテーマになるのか!

ある鍛冶屋さんから庖丁をサンプルで預かり、試しに砥いで使ってくれないかと言われた事から
ねじれがテーマとして浮上しました。 出来立てホヤホヤで受けたので1ヶ月でも寝かせてから砥ぎに!
っと思っていた所に、お願いしようと思っていた刃研ぎ屋さんが来たので、見てもらった。。。

すると、こんな回答が!!


刃研氏 「だからな、こうなってるとタガネを多く入れなアカンねん」

達哉  「???なんですの?どうなってます?」

刃研氏 「叩いて締めてるのはエエねんけど、”ねじれ”てるねん!」
      「こうなったら、タガネを打って”ねじれ”を治さな砥がれへんねん」
      「もうちょっと!!と思ってタガネ入れたら締まってる分、割れるんや・・」

達哉  「え。。ねじれって刃付け屋さんが取るもんなんですか?」

刃研氏 「鍛冶屋がとるんや!!(怒笑)普通はな・・・」
     「ねじれたまま砥ぐ事はできるで、ねじれたように砥げばできる」
     「でもお客さんが砥石当てたら、当たる所と当たらん所がモロに出る」
     「それを良しとするか、どうかやな。俺は良しとせんけど、この手の庖丁は
     「砥ぐのしんどいし、ひと手間入れなアカンねん(怒笑)」

達哉  「す、、すんません。。あ、ありがとうございます。」


刃研氏  「あと、裏の比もな。。。」「ベト落とししてや〜」


色々な事をツラツラと・・・・。 

良い庖丁にしたいから言うのだと・・ 変に手を入れる? 無理くり修正すると
あまりエエ事ないようで・・・。 成すがままに出来上がるのが良い!


この刃研氏さんは、上の刃付け屋「本霞オンリーや本焼」でされてる方。
色々言うけど、持ってくる包丁の砥ぎ上がりは、ピカイチ!というか基本が基本として
成り立ってる刃研氏さんです!

ついでに、色々聞いてみた。

■ローラーで伸ばした庖丁は、ねじれます?

ねじれる物もあるやろうけど、反るやろうな〜鋼側(裏側)に!
締めてないと、あっちこっちへ動きよる。。
動いたまま、砥ぎ込んだら庖丁として成立せんで!
ま、値段的(工賃安=廉価)には成立するやろうけどな(笑)

■叩いた庖丁でも叩かない庖丁でも動きます?

動く、本焼でも霞でも絶対動くで、研いだら動く。
この動き方が、叩いてる方が素直に動くよな、、叩いてないのは蛇みたいに蛇行しよる。
これは、治しにくいで〜〜。 治すのが仕事やけど・・・。 蛇行するのは良く無いな。

結局、素直に動いても動いたら治さないと余計なトコまで砥ぐから手間掛かるわなぁ〜。
そんなんやから1日10本しか出来へんのかも、、俺って手遅いんかな〜
(いえいえ、丁寧な仕事お願いいします(笑)



結局、鍛冶屋さんがきちんとした仕上げ(歪み取り)をしていないと、刃付け屋さんが
苦労すると言う事に。。。手間が掛かるから、無視してねじれたまま砥ぐからお客さんが
砥いだ時に変な事になってしまう(^^;

この鍛冶屋さんから上がってきた地のねじれを取って仕上げる砥ぎ屋さんは少ないらしい、
相当面倒なのと、そんな事を気にする問屋が少ない事が背景にあるようで、、、

変な話、ねじれを取る為にタガネ入れて庖丁を割ったら、、弁償と言う問屋もあるようで。。
触らぬ神に祟りなし。。でしょうか(苦笑)


本当の本霞研ぎは、このように丁寧な歪み取りに尽きる!見た目だけ綺麗な霞が本霞では
無いような、、、前に話したかもですが、本霞と霞の違いは歪み取りの差にあるようで、
マメに歪みを修正した庖丁は、本霞の分類に!
右や左の曲がりだけでなく、ねじれも修正してこそ、本当の本霞研ぎなのかも・・・。


このねじれは、お客さんが修正するのは無理で、もしも治す事が出来たとしたら、裏の刃(裏押)
はウネウネに曲がった状態で、表のシノギ筋もウネウネ曲がる状態になります。

器用なら、、ねじれる様に研げば。。。って思うかもですが、砥石がねじれてないと出来ないかも
平面の砥石でねじれた庖丁は砥げない?? まあ、、無理って事で・・・。


右や左に曲がった庖丁(叩いてないローラー系の庖丁、低炭素鋼か??)は、器用な人なら
自分で治せます。治し方書いても良いのですが、、、失敗すると大変な事になるので・・・。
念のために、本焼は自分で治せません! メーカーに修正依頼しましょう!

 

庖丁は生まれが肝心です!
鍛冶屋さんが、しっかり叩いて歪みも取った物を、刃付け屋に渡し。
動く庖丁をこまめに修正しながら仕上げ、最終チェックをする問屋があって、品質が決まる!



今回は、ここまで!
このねじれは、どんな庖丁でも大敵となる歪みなので、よ〜くチェックして庖丁選びしましょう!

文章ばっかりでスミマセン(^^; 


補足しておきますが、完全に歪み無い庖丁なんて無いと思います。
絶妙な歪みは、手作業で作られた物を解釈して頂けたらと思うのです。
少しでも狂いの無い庖丁を選ぶ事、もしも狂い無い完璧な庖丁に出会ったら運命の出会いです!


手前味噌ですが、酔心夢工房では、コレを提供出来るように努力してます。
偶に社長や事務員(会計)と言い合いになりますが(苦笑) 良いものを造りたいんです。


次回は、真空接合とかやってみましょう!

裏表合わせて平面にしなくては刃が真っ直ぐならないからです。

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