2005年6月期「白三鋼の実力」


皆様いかがお過ごしでしょう!朝晩が涼しいものの日中は暑い日々が続いています。
鍛冶屋さんも、「暑いわ〜、こたえるわ〜」っと言って居られました。
そうそう、鍛冶屋さんは長生きなんですって!新陳代謝が良いからでしょうね!

今回は、職人修行志願者の特集?をしようかと思っていたのですが、各職人さんが
白三鋼について色々と聞かせてくれたので、それを先に紹介です。



白三綱の実力

C:0.80%-0.90% P:0.025以下 S:0.004以下 白三綱の大まかな化学成分です。
少し前の特集で、鋼素材に関しての特集をしました。詳しくはそちらをご覧頂ければ解ると思います。

一般的には、白二鋼のランク辺りから本職用として使用可能とされています。
本職用とは、良い切れ味が長く保てる事や付けられている柄の耐久性、仕上げ研ぎの状態などから
本職用(本職に耐える包丁)として位置付けされています。

その下に位置するのが、白三綱です。業界では家庭用の上として扱われていると思います。
その下が黄鋼で、恐ろしく安い和包丁はコレになります。
白三綱と白二鋼の違いは炭素量の違いだけです。その差は0.10%程度です。



鍛冶屋さん曰く、白三綱は製造しやすく手がそんなに掛からないと言っていました。
青二鋼や白二鋼を製造するには作業毎に包丁を暖めるなどの作業をする必要が
あるとか、焼き入れ温度の繊細さや鍛造温度の繊細さを要求されるようです。
白三綱は、比較的素直な素材でダンダン〜っと製造出来るとの事で、効率良く製造
できるので価格も安くなると言う感じでしょうか!

いつもは白二鋼や青二鋼の話を職人さんとしていますが、先日は白三綱の事を各所
の鍛冶屋さんと刃付け屋さんで聞きました。
口を揃えて言われていた事が、ちゃんと作れば白三綱も本職用として使えるとの事。

ちゃんと作る?っと言うのが問題で、しっかり叩いて低い温度で鍛接して製造すれ
ば良い包丁が作れると言う事なのです。白三綱は脱炭もしにくく高い温度で製造し
てもそれなりに包丁として製品になるので、高い温度でガンガン鍛造して仕上げる。
脱炭しないと言っても鋼は絶対痛む。白二鋼や青二鋼と比べて作業効率が良いけど
単価が低いからそんなに手を入れれないと言った具合の悪循環が生じる。
これを、単価が低いながらもしっかり製造すれば変な白二鋼よりも綺麗に焼き入れ
処理や歪み取りが行われて良い包丁が出来ると言う事です。

刃付け屋さんでは、白三綱の方が砥石に良く乗り研ぎ易い包丁になると言われてい
ました。基本的に研ぎ易い素材の鋼をしっかり叩いて鋼を締めて粘りを出してやれば、
安くて、研ぎ易くて、長く切れる包丁になると言う事になります。
しかし、その作業を行える職人さんは限られていて多く出まわる白三綱は量産方向
へ行ってると言っていました。炭素によっての硬さよりも叩いて締めた硬さ(粘り硬い)
のが研ぎ易く、良く切れると言う解釈でしょうか。

そんな話の最後に、言われてた事が包丁の良し悪しを解る調理師さんが減ったと言う
事、料理学校へ行けば免許が取れたり、学校の先生が包丁の研ぎ方を知らなかったり。
やっぱり包丁を研いだりしないと良し悪しも解らないでしょうし・・調理学校の授業
で包丁研ぎなどのカリュキラムを組んでくれませんかねぇ・・・。
どんな状況なのか今度、知り合いに詳しく聞いてみようと思います。
あっ!でも調理学校の生徒が職人さんの所へ来て研ぎを習ってた事があったなぁ〜!

変な白二鋼と言いましたが、それは鋼の温度管理をしないで製造した包丁の事!
白三鋼と同じ感覚で製造する事は無いと信じたいですが、もし同じ感覚ならば脱炭率の
低い白三綱の方が良いかも知れませんね〜。個人的な見解ですが、色々な包丁をみまし
たが綺麗に焼き入れされてる白二鋼は非常に少ないと思います。
それだけ、焼き入れや製造が難しい素材が白二鋼なのかも知れません。

ちなみに、堺で白鋼と言えば白三鋼の事を言います!
写真の安来鋼とは酔心では白三鋼になります。


白二鋼よりも白三鋼のが良く錆びる?

炭素が多いほど、酸素と結合して錆びになると言う考え方があります。
白二鋼よりも白一鋼のが錆び易いとも良く耳にする話です。
会社にある包丁を見てみましたが、白二鋼が細かい点で錆びるのに対して白三鋼は
面で錆びる印象を受けました。更に、白二の方が深く入り込んでいるような・・・。
しかし、究極に分類した結果なので見た目的には、ほとんど一緒でしたし、職人さん
曰く「一緒やなぁ〜気候によって変化するけど同じくらい錆びるで」との事でした。

この錆び易いと感じる原因は沢山ありますが、一番の理由が仕上研ぎの状態にある
かも知れません。主には鋼が使われているのは裏側です。
軟鉄部分も錆びますが、軟鉄は極めて炭素が少ない鉄なのでこの対象にはなりません。
大概の包丁は、裏鏡面などしていません。裏に木砥目が入っています。
この木砥目が白二鋼よりも白三鋼のが深い印象を受けます。この木砥目は金剛砂を、
木を張った丸いフランジに付けた物を使用しますが、この金剛砂の番手も色々あるので
霞研と本霞研ぎで職人さんが使い分けているのかも知れません。

っと書いていたら、たった今職人さんが来たので金剛砂の番手変えてます?っと聞いた
らやっぱり変えているようです。霞研ぎと本霞研ぎによって金剛砂の番手が変わってい
ます。もちろん細かい方が見た目も美しく錆びも乗りにくいです。
想像して下さい、中砥で研いだ面と、仕上げ砥で研いだ面の滑らかさを!!

白二鋼の裏状態 安来鋼の裏状態


ちなみに、その職人さんは表の木砥目には白二、白三共に同じ番手の金剛砂を使用して
るとの事!表は軟鉄部分に木砥目が入ってますので、錆びに関しては関係無いような・・。

そもそも、白三鋼は普及品として扱われていますので、出来るだけ安価にしたいっと
言うのが、販売側の思いでしょう。本当に安くしたいならば、黄紙を使えば安く出来ま
すが、黄紙よりも白鋼(白三鋼)と記述した方が高価な感じがしますし本職用っぽく
感じられます。 じゃあ白三鋼で安くしてやろうと思えば・・・研ぎのランクを落とす
柄の質を落とすと言った事になります。

研ぎのランクを落とせば、改良霞研ぎ(切刃がザラザラな研ぎ)になります。
これは以前に、研げば霞のようになる・・・っと言いましたが、裏の研ぎや歪を見ると
それは間違いかも知れません・・・。手を入れていない分やっぱり酷い感じです。
そんな事から、白三鋼のレベル??認識が余計に少し低いような気がしています。

霞研の切刃状態 改良研ぎの切刃状態
上記を見て頂ければ解るように、きめ細かさが違います。なんでこんな事になるのかと言う
と、改良の方は切刃に凹凸が沢山あります。粉を吹いて霞ませた方が凹凸が目立たない
事と、作業効率を上げる為です。
霞研と本霞研ぎの違いですが、上記に書いた金剛砂番手の違いもですが、歪取りの回数が
大きく変わります。本霞の方がよりシャッキっとしています。
また本霞は上研とも言われたりします。


話が大きく飛びましたが、白二鋼と白一鋼では錆び易いなどの話が出るかも知れませんが、
白三綱と比べた場合は大きく変わらないと思います。
注:(鋼としての錆び易さ!研ぎによって変化デス)

厚みの話。

白三綱の包丁が薄いと言う意見を頂きました。
これは、利器材のせいかも知れません。最初から鍛造した状態の包丁をローラーで伸ば
した物もあります。叩いて伸ばすのとローラーで伸ばすのでは厚みも変わります。
こういう包丁は鍛冶屋さんから上がってきた時点で刃元から刃先まで同じ厚みです。
これを研ぎ屋さんが荒研ぎなどで元から先までの厚みの変化を付けると聞きます。
美味しい部分を全部研ぎ取ってしまう感じでしょうか・・・。ローラーですので美味しい
かどうかは微妙な感じですが・・・(^^;

このような包丁は安いです。5000円しませんねぇ〜。それ以上で売ってたら暴利だ!
柄の角がプラスチックな物はこんな包丁だと思って良いと思います。
研ぎも改良霞み研ぎになってると思います。本刃付けしようと思ったら切り刃にエクボが
沢山でますよ〜(^^; 裏もボコボコなんで、お薦めしにくい系の包丁かと・・・。
ちゃんと作った包丁は、厚みがあり重量感がある包丁になってます。

本当の事を言うと、同じ厚みの包丁は中子も同じ厚みなので、柄を付けるのがメチャ楽で
す。もちろん一本に必要な時間は少なくバンバン叩いて柄を付ける事が出来ます。


本当に良い白三綱は!

低温で鍛接して、しっかり叩かれ良く締まった包丁。
鍛冶屋さんの仕上げ時点で刃元〜刃先までに微妙な刃厚の変化がある事。
本霞研ぎで歪みが綺麗に取れていてスッキリしている事。
研ぎ易い事、値段が適当である事。
柄は水牛の朴柄が付いている事。(黒檀とかを付ける必要は無し!)
こういった点が良い白三綱の条件でしょう。

白三鋼の実力は、優れた技術で製造されれば白二鋼や青二鋼に片を並べれる事が出来る
かも知れないと言う事です。白三鋼、白二鋼、青二鋼とそれぞれに長所があり短所があります。
それらを調理場(使用状況)によってチョイスするのが最適かと思います。

ちなみに、悪い白三綱は刃持ちが悪くパリパリ欠ける系の包丁です。
ハシカイとは分けが違います。粘りが無い包丁って事でしょうか・・・。

って書いてますが、包丁は使ってみないと解らないんですよねぇ〜。
見分ける方法は、見た目しか無いのが辛い・・・。酔心でも研がないと解らない部分が
多いですし何十本あってもそのうちの数本に癖があったりしますし(^^;

修行志願者の特集は次回になりますが、今回の職人さん見学体験で職人さんから聞いた
話は、こちらが10丁中の1丁でもお客さんは1丁の1丁だと言う事。
日々修行でも少しだけ書きましたが、職人さんの方が遥かに多くの包丁を触ります。
職人さんも同じような気持ちで包丁製造に携わっている事に感銘を受けました。
クセがあるなら出来るだけ職人さんの手でクセを取り除いてやる作業もしてるようです。

酔心では最終に絶対研いでますので、良い物だけを拠る事が出来ます。
本当に良い物をお探しならば、酔心へお問い合わせ下さい。その際は希望の状態を克明
に記載してメール下さい。希望とおりの物が無い場合は時間を頂きますが、良い物をお届け
出来る自信あります。もちろんオーダーメイドも出来ます。

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