2006年4月期「白鋼にします?青鋼にします?」

お久しぶりでございます(^^)
バタバタと忙しく、また充電期間としてゆっくりじっくり過ごしていました。
久しぶりの特集は、「白鋼にします?青鋼にします?」です。
庖丁の種類と鋼材の関係と求める切れ味の事をチョコチョコ書きました。
ちょっと物足りない部分もありますが、その辺は色々と考えてみてください。



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白鋼にします?青鋼にします?                              

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本職用の炭素鋼と言えば、青鋼と白鋼が出てきます。ここで言う青鋼と白鋼は、
青鋼「青一鋼、青二鋼」白鋼「白一鋼、白二鋼」として話を進めでいきましょう!

基本的に、青鋼関係の方が約1.5倍ほど白鋼関係よりも高価になります。
値段の高い方が良いような気になりますが、包丁は実際の使用感を考えて選ぶ事を
強く勧めます。

じゃあ、青鋼系と白鋼系はどう違うのか?選ぶ時の具体的なポイントは?
また、包丁の種類によって鋼材を変えるってのは? こうしたいけどあーしたい!
っと言った事をやってみましょう!


■青鋼のメリットはなんじゃろか!■



青鋼のメリットは、「長く切れる」「滑らかに切れる」「砥石乗りが良い」
この辺が大きいポイントでしょう。

長く切れるという事は、一度綺麗に刃付けをすれば、その切れ味を長く持続出来る
と言う点にあります。どうして長く切れるかと言うと粘りがある為に、薄く伸ばした
刃がチギレにくいんじゃないかなぁ〜っと思っています。

滑らかに切れるという事は、切り口が綺麗に仕上がる事につながります。
どうして滑らかになるのかと言うと、長く切れるために配合しているクロムが関係し
ています。それと、鋼自体の分子が細かい為に、細かい砥石で研げば変な話切れない
包丁にしてしまう事もできます!←オーバーな表現ですね(^^;

砥石乗りが良いという事は、要するに研ぎ易いと言った方が良いかも知れません。
研ぎ易いって事は鋼材が軟らかいって事になるのですが、カチカチに硬いのではなく
粘りと分子結束度による硬さを持ってるんじゃないんかな?って思ってます。
シャキンとした刃が付いてない感じがするのに、良く切れます。
刃が甘いのに切れる=甘切れ〜〜(^^)b


注意:砥石乗りが良い
青一鋼や青紙スーパーなどは別物ですので宜しくです。


■青鋼に最適な包丁種類■

上に書いた、「長く切れる」「滑らかに切れる」と言う点を考えて選ぶとすれば、
刺身包丁(柳刃、蛸引)が青鋼に適した包丁だと思います。

忙しいお寿司屋さんなどは、沢山のネタを引いたり旅館などでは宴会で一気に100人
前の刺身を引いたりします。途中で切れ止んだりすれば、イライライライラ(><;
最初に出した刺身と最後に出した刺身の照り具合が変わったりしたり・・・。
そう考えると、長く研いだ時の切れ味を維持する事ができて、更に滑らかに切れて切り口
が美しく仕上がる青鋼関係が適していると思います。

出刃とか薄刃とかはどうなのさ?ってなりますが、こちらの種類は上級者向けになる
かと思います。青鋼の切れ方を解った上で使えば良い調理が行えると思いますが、
単に切れ味が持続すると言う事だけで、選ぶのはなぁ〜っと思う次第です。
「じゃあ良くないんや!」ってなりそうですが、青鋼のが仕上がりは綺麗になると思います。
ただ、使い手を選ぶと言う点があるかも知れません。


■青鋼を砥石で切れ味操作■

庖丁は本体が一番大切です。それがしっかりしていれば、砥石で切れ味を操作してやる事
が出来ます。青鋼はクロムが入っているので少し滑る感覚を覚えるかも知れません。
闇雲に細かい砥石で研げば良いと言う訳でもありません!
この操作方法ですが、個々に違うのでコレで操作!がありません。
また、仕事によっては切れ過ぎるのも問題です!
車で言えば、300馬力FRの車でカーブを曲がる時、その馬力を持て余してしまう感じ
でしょうか!アクセルを踏めば早く曲がれる事はありません!そのパワーを余す事無く路面
に伝えて、タイヤを空転させる事なく曲がればその能力を最大限に使用して早く曲がれるかも!
乗り手によっては、普通の100馬力程度の乗用車の方が早くカーブを抜ける事が出来る
感じでしょうか(^^) ←解りにくい例えですね〜。

話は戻って、柳刃を例に挙げて説明しますと、自分が引いて切り終えたい感覚に合わせる感じで
しょう。もしくは、切り口(切った断面品質)の理想に合わせるなどです。
300mmを使いたいが、調理場が狭くて270mmを使わなければならないならば、
270mmで300mm並に切れるように研げば良いと思われます。
しかしながら、長い庖丁でスゥ〜っと引いた方が切り口が綺麗になると思います。
この当たりの調節(妥協点)が問題ですね!

270mmで300mmと同じ感覚で切り終えるには、砥石を荒くする事で解決しそうです。
300mmを6000番で研いでいたのを270mmでは5000番にするとか!
そんな事で雰囲気が変わってくると思います。
砥石を天然にするか、人造にするか!でも変わってきます。
番手が細かい人造砥石よりも、番手が荒い天然砥石の方が鋭く噛むように、しかも滑らかに
切れる事があります。 この砥石素材によって変わる切れ味変化も面白い部分です!

こんな事を酔心の庖丁で全部調べてやろう!と思ったのですが、膨大な組み合わせになりそう
ですし、相性を探す楽しみも奪ってしまいそうなので・・・。


■青一鋼と青二鋼■

青鋼にも種類がありまして・・青一鋼AB 青二鋼AB。青紙スーパーなんてのもあります。
この辺は、過去に特集で色々書きましたので省略ですが。選ぶ際のポイントです。

え〜和庖丁ならば青二鋼のBで良いと思います。 終わり!って言うのは嘘です。(笑)
青一鋼に憧れますが、研ぐのが大変です。それを理解した上で選ぶ事が重要です。

青一鋼を選ぶならば、蕎麦切り包丁など研ぐ作業が少ない庖丁にオススメです!

AとBですが、Aの方が炭素量が多いので硬く鋭く!っとなるのですが、炭素量と一緒にクロム
なんかの添加物が増えますので、Bのパワーアップ版です(^^)Aはどちらかと言うと大工道具
に使った方が生きてきそうな感じですねぇ〜。

青二鋼Bが料理庖丁をして総合的に優れていると思われます。
その中で鋭い物を選びたいのならば、疾風のようにしっかり叩かれて絞まった庖丁を選ぶと青一鋼
のような硬さ(正確には粘り硬い、中身の詰まった)を手に入れる事が出来ます。

青一鋼や青紙スーパーは、研ぎに関して熟練されて研ぐ時間を惜しまない方にオススメです。
青紙スーパーの本焼なんかは、錆びを乗せなければ一生使えます!

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■白鋼のメリットはなんじゃろか?■



白二鋼のメリットは「鋭く切れ込む」「価格が安い」「研ぎ易い」などでしょう。
鋭く切れ込むと言う事は、噛み付くように切れると言う感じでズバァ〜っと刃が入って行きます。
添加物が無いので、鋭く切ると言う事に特化した鋼材(本来の性能をしっかり果たす)です。
価格が安いのは、青鋼よりも安いと言うだけです(笑) 手に入れやすく、しっかり切れる鋼材!
本職用として十分な切れ味を持ったシリーズと言う感じです。
研ぎ易いと言うのは、青鋼関係と比べると若干硬く感じるのですが、それなりに研ぎ易いと言う
感じです(^^; 研ぎ易さは鍛冶屋さんでの熱処理で大きく変化します。
研ぎやすく鋭い庖丁をお求めの方は、エエのがありますのでお問い合わせ下さい。
ココでは書きたくありません(^^)b

白鋼の最大のメリットは、結果的に鋭く切れる切れ味を持っていると言う事でしょう!


■白鋼に最適な包丁種類■

「鋭く切れ込む」と言う点から考えて、出刃や薄刃などが最適だと思っています。
これは、切れる距離の事を考えての事で、良く切れ込む出刃であれば短い出刃を使う事ができます。
240mmで捌きたいサイズの魚でも良く切れ込むならば210mmでもOK!となるかもです。
庖丁が滑らないので、短い移動距離で深く切れ込むと言う考えです。←机上の想定!

出刃は長くなればそれに伴って重量(厚み)も重くなってきます。
240mmの出刃と210mmの出刃ではその重量差に激しい物がありますよね!
それを克服する為に、薄手の出刃(身卸出刃)が存在するのですが・・・。

そして薄刃ですが、和的に考えてカツラ剥きや野菜を刻む事を考えると庖丁の運動量(移動距離)が
短い方が、効率が良いと思うのです。前後の動きが少ない使い方を考えると良く切れ込む白鋼に最適
な種類の庖丁だと! 極端な話、スパ!っと切れ込んだ方が切った面が綺麗かもです!
しかし、煮物などするならば、繊細な話青鋼の方が勝っているかも知れませんね!


特別な視点で考えて最適な種類の庖丁を挙げさせて頂きましたが!
次で話する「砥石で切れ味操作」によっては、柳刃関係の白鋼でも十分良い結果を出してくれそうです。


■砥石で切れ味操作■

さて、白鋼の砥石による切れ味操作です。
基本的には、青鋼と同じなのですが白鋼は相当細かい砥石で研いでも滑る感覚が少ないと言う事です。
むしろ、白鋼を細かい砥石で研いで青鋼のように滑らせて使用するのもアリかも知れません。
白鋼なりの鋭い切れ味を持たせつつ、青鋼のように滑らかな切れ味をも持たせる!みたいな感じ。
しかし、その切れ味は青鋼のように長く保てませんのでヨロシクです(^^;
柳刃などは、上に書いた方法で使用すれば切り口を綺麗に仕上げる事ができそうです。

鋭くしたい場合は、人造のセメント系砥石で研ぐと本当に噛んでるように切れます。
少々細かくしてもセメント系なら噛み付きます。推奨は超セラ#6000などです。

天然砥石で仕上げると、噛み付きと滑らかさを両方良い具合に得る事が出来ます。
オススメは日照山!極めるなら中山! コッパ程度の砥石で刃先を撫でるだけで十分効果があります。

白鋼も色々と組み合わせがありそうですが、色々試してみる事をオススメします。
ちなみに、ご紹介した超セラなどは研ぎ終わってから綺麗に洗わないと錆びますので注意です!


■白一鋼と白二鋼■

白鋼にも種類がありまして・・白一鋼AB 白二鋼AB。
この辺は、過去に特集で色々書きましたので省略ですが。選ぶ際のポイントです。

白鋼関係は、料理庖丁として良いと思います。
一般的に売られているのは白二鋼Bだと思って良いと思います。

白一鋼は青一鋼と同様に硬い鋼材になります。研ぐのが少々大変だと理解して購入する事をオススメします。
究極の切れ味を求めない限り、白二鋼ABで十分素敵な切れ味を得る事が出来ると思います。

ついでに!白一鋼は作るのが難しい(正確には焼きいれが難しい)ので安定した庖丁を得るには、
それなりの実績や知識を持ったお店で買う事が重要です。

青鋼も同じですが、白鋼ほど鍛冶屋の腕が大きく庖丁に現れる鋼材は無いと思います。
鬼手仏心のように、白二鋼Aなのに硬くなく優しく切れ込む庖丁なんてのは良い例です!


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▼青鋼白鋼共通の事▼


■本焼にする?鍛造にする?■

「やっぱり本焼は長く良く切れますよ〜」ってな事を良く聞きます。
「研ぐの大変やし、切る部分は鋼やねんから鍛造でエエやん」ってのも聞きます。

本焼は、普通に作れば長く切れる庖丁になります。
鋼一枚を温度を上げずに淡々と叩いて伸ばして〜ですから、製造上叩かなくてはならないのです。
叩かないで作った庖丁は知りません(^^; 叩くと鋼の分子が細かく砕かれて絞まった庖丁になります。
叩く事で鋼材が粘りを持ち、長く切れる庖丁になるわけです。
長く切れる庖丁が欲しければ本焼を買えば間違い無くそれなりに長く切れる庖丁を買う事が出来ます。
(安い本焼なんかは非常に怪しいので。。。安かれ悪かれで!)


鍛造は、製造するのが難しい種類の庖丁になります。
「えっ!本焼の方が難しいんじゃねぇのかよ?」っとなりますが、本当の話、鍛接する時の温度管理が
ちゃんと出来るか出来ないかで庖丁の良し悪しが大きく変わります。
この温度管理がきちんとされて、更にしっかり冷間鍛錬を施された庖丁は本焼と同等の切れ味を得る事
が出来ます。 本焼よりも研ぎ易くて本焼並に切れるなら値段も考慮すれば鍛造のがオススメかも!
やっぱり鍛造は庖丁選びよりも鍛冶屋選びですね!


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★もしも、僕が調理師ならば!★炭素鋼の場合。

もし、今の知識で調理師ならばどの庖丁を選ぶのかと考えてみました。
正確な話、腕の問題もあるかも知れませんが、今現在で自分ならコレを選ぶっていうのを!

柳刃は、土井さんの青二鋼  出刃は、富樫さんの白二鋼A
薄刃は、土井さんの白二鋼B 骨切は、富樫さんの白二鋼A

全て霞(鍛接)の庖丁です。サイズは・・ん〜調理する場所によって変わりますが、
柳刃ならば尺、出刃は七寸、薄刃も七寸、骨切りは九寸かなぁ〜。
骨切りなんてした事ないですけど、持った感じで自分に合うのは九寸!

まあ、調理に素人な考えのチョイスなので、そんなに参考になりませんが用途によって選ぶ鋼材と
しては、問題ないチョイスだと思われます。研ぎ易いって事で選んでます。


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今の感覚と知識では、上記に色々と書いてきた事で良い結果が生まれると思います。
全ての人にとって、それが最高と言うものは無く・・・。それぞれに使い分ける事で快適に調理が
行えるのでは無いかと思います。

本焼きが庖丁の最高峰と言われたりしますが、それもまた難しい問題ですね!
その最高峰を上手く使いこなせなければ、宝の持ち腐れになってしまうとも思いますし
先日、実際に本焼青二鋼フグ引でアジの刺身を引いてみました。正直良く切れますが、性能を全て
使い果たしてる訳ではなく、自己満足な感じに陥りました。切れてるねんけど、物足りない・・・。
これは、自分の操作感が無いからかなぁ〜っと思ってみたり。
また、これが柳刃なら操作感が増す?重みで切ってくれるので感覚も違うかも知れませんが、
今回はフグ引きだったので自分の技術を問われたような気がします。

「お前にはまだ本焼を使うのは早いんだよ!」っと庖丁に言われた気分でした(^^;

良い包丁を使う事は良い事ですが、度が過ぎるとあきまへんなぁ〜〜(笑)

って事で、久しぶりの特集でした。

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