2007年4月期「本焼について語る・・。」
 

 更新が遅くなり申し訳なく・・・。すみません(^^;
ちょっと書いては、新しい事を知ってしまったりと色々ありまして遅くなりました。

本当は、裏特集にUPする予定だった本焼について職人さんと話した事なのですが、
通常の特集弐幕に掲載する事にしました。 

裏のIDやPASSをお問い合わせ頂いた方には申し訳無く・・・。
次は、裏でしか教えたく無い「滑らかに鋭く」がありますので、そちらをお待ち下さい。。

■本焼きについて語る■

日々修行に書いてた本焼きについての鍛冶屋さんとのお話内容です。

なんで油とか水とか聞きたくなったかと言うと、修理で預かった他メーカーの本焼包丁が異様に
柔らかく感じたからです。写真などで見る限り硬そうに見えてたのに思ってたイメージと違う!
(硬そうなイメージを持ってたのは僕だけかも知れません^^;)
波紋も出て無かったし、これってどうなってんの?っと思ってた所に、本焼エキスパートな職人
さんが納品に来られたので、聞いた事から始まりました。

■水焼と油焼■

一般的に、水焼の方が硬く焼きが入って油焼がまったり入ると言いますが、そのへんはどうなのか!
聞いてみた所、切る事に必要な硬さ、包丁として使用出来る硬さはどっちでも入るとの事でした。
結局、焼き戻しなどで硬度を落とすので、お客さんの手元に届く包丁の硬さなんかは厳密には同じ
じゃないけど、似たような感じのようです。

水焼と油焼はどっちが難しいかと聞いたら、「どっちも難しい」と言われました。焼き入れする油
にも種類があるようで、昔から慣れ親しんだ油には発がん性物質があったりする事から販売停止!
新しい油に変わってから、上手く焼きが入らなくなったようで・・・・。
時代の変化による難しさも加わった難しさという感じでしょうか(^^;


■どっちがエエのか?■

水と油どっちがエエのか!と言うのがやはり気になる所ですが、この辺りは各鍛冶屋さんの見解や
好みがあり、青は油がエエ!とか白は水やろ!とか(^^;そう言うレベルな感じがします。
いずれにせよ、綺麗に焼きを入れる事が出来てプラス波紋などが綺麗に出る手法が良いんじゃない
かと言う見解に落ち着きます。 こんなあやふやな見解では、納得出来ない読者の為に白黒ハッキリ
させますと、水焼の方が良い(本焼は水焼に限る!)と言うのが一般的に言われている事で、色々な
鍛冶屋さんが自分が打つ本焼の魅力を語るときに絶対言うのは「うちは、水で焼いてます!」です。

どっちが良いのか!を考えると、「本焼は水焼き!」と言われ続ける事を考えると水焼に軍配が
上がりそうです。 刃物は正直な物で、駄目ならその影はドンドン薄くなりますし・・・。

水で焼いたか油で焼いたか本当の事は鍛冶屋しか解らないと鍛冶屋さんが言ってました。
水焼の見方は後ほど!




■水焼と油焼、鋼に与える影響■

この記事を書いている時に、また違った意見を聞いたので追加です。
いろいろな意見を聞こうと思い、「水と油ってどう違いますの?」

水で焼く(急冷)すると鋼がオーステナイトからマルテンサイトに変化するようで、
ようするに硬く細かくなるって思って良いと思います。

逆に油で焼く(徐冷)すると急冷同様に変化しますが、マルテンサイトに
オーステナイトが残ります。残留オーステナイトなんて言うようで・・・・。
ようるすに完全に硬くなりきらず・・・って事になります。

どっちが良いのかと言われれば、完全に変化した方がエエと思いませんか?
これを判断するのは、本当の所調理師さんやね!っと言って居られました。
最後に「うちは水で焼いてます。」っと言って居られました(^^)b



■波紋について!■

本焼と言えば、峰から切刃に出る波紋も魅力の一つです。ご存知と思いますが、波紋の内側は焼きが
甘くなっています。理由は、製作時に歪を取る為と使用時の衝撃吸収です。
歪取りは、良い包丁にする為の基本作業です。これは刃付け屋さんでしか取る事が出来ません!
タガネで叩いて修正するので、多少力が逃げる部分が無いと折れたり割れたりします。。
使用時の衝撃吸収とありますが、ハッキリ申し上げますと衝撃を吸収しません(^^;
薄く研ぎ上げてこじたりすると、一発でパキンと亀裂が入ります。
だいたい亀裂は、刃先からシノギ筋あたりで止まる事が多く、波紋の位置でその割れが止まります。
完全に割れる事を防いでいる感じかも知れませんね!


刃側が茶色に変色していますが、コレはこの部分に亀裂が入ったまま放置したので
錆びてしまった物です。この亀裂が本来、波紋部分の所まで一気に走ります。

波紋部分の鋼分子と包丁として使える部分の鋼分子の細かさ違いに注目!
中砥と仕上げ砥みたいな差があるでしょ〜〜。

これが油焼だと、細かさの差が生まれにくいんかなぁ〜。
細かい所に荒い分子が混ざる感じかもですね!! やっぱ水でしょ 本焼は!


こんな薀蓄は置いといて。。。。

波紋についてですが、波紋が出なくても本焼としての性能は十分に備えています。
なので、他と比較して安い本焼包丁は波紋が出てたらラッキー程度に思った方が良いかもですね!
波紋が出た物を選んで刃付けをするから鍛冶屋さんでロスが出て割高になるんです(^^;
ちなみに、鍛冶屋で波紋が綺麗に出ても、刃付け屋の仕上げ次第で波紋の映りが変わります!

オーダーメイドなどで、「波紋を綺麗に出してくれ!」と言う要望がありますが、この時1丁のオーダー
に対して、4丁打って波紋が一番綺麗な物を販売しています。こんな事を気にしなかったら安く出来る
んですけど・・・。ん〜〜折角のオーダーメイドですし・・・・。
っと言うよりも「酔心の本焼は波紋綺麗に出た物しか納めてません!」と鍛冶屋さんに言われました。。

で、波紋ですが、これを出し過ぎると良い包丁にならないと言っていました。

この真相は、鍛冶屋さんに詳しく聞かなくてはなりませんが、説明するのに言葉として表現しにくい
ような感じに取れました。波紋が出過ぎると硬度が落ちるのか? 波紋部分(焼甘い)と刃部分の硬度
に差を付けすぎる事があまり良くないと言う事かも知れませんね。

追加:もう一人の鍛冶屋さんも、波紋が出過ぎると良くないって言ってました!


■本焼は薄く研げる?■

日々にも書きましたが、最近修理が多くあらゆるメーカーの本焼や霞包丁が来ます。
主に、夢工房で行う柄交換、鞘合わせ、裏スキ、銘入れなどですが、この時使用された状態で送られて
きます。特別研ぎ上げて送られてくる事は無く、使って汚れを落とした状態で来ます。

それらに一貫した特徴があって、本焼は刃を爪に乗せればピロピロする状態で送られてきます。
霞は、どちらかと言えば厚めな研ぎが行われています。

最初は、「本焼を何でこんなに薄く研ぐんやろ?、所々欠けたりしてるし・・。」そう思ってました。
と言うか、ここまで研ぎあげるのに時間掛かったやろうなぁ〜っと(^^;
何かあるんちゃうかな?っと思い、実践の場での意見を聞く上田さんに聞いてみた!
「なんでこんなに薄く研ぐんでしょ・・?」

答えは簡単だった、「本焼きは薄く研げるからやん!」 そうなんですよ(^^)b

本焼は粘りがあるし、硬いから薄く研げると言う事。
単に硬いだけだと、ポロポロ刃がこぼれて薄く刃を付ける事が不可能って事にもなります。
ぎゃくに粘り強いだけだと、シャンとした刃を付ける事ができません。。

基本的に、薄く研げば刃が入る時に抵抗が軽減されます。
極悪に言えば、ハマグリ刃とて一種の抵抗に成りかねないのでベタっと一枚にした方が切る
と言う事に長けては最高な状態になります。

ベタ研ぎ最高!これしかない!と思う人も居られるかと思いますが、そんな方に一言だけオススメ!
ちょっとだけでいいから、糸引きを入れてみて下さい(^^)

これは勇気が必要だと思います。「硬い包丁を頑張って研いだのに刃を立てるのかよ?」
いわば、極上のマグロ、しかもトロの一番良いところを焼く感じです(笑)
でも、これで包丁長持ちしますよ!



刃先に小さい小刃欠けば見えます。薄く砥ぎ過ぎの写真ですが、切れ味は抜群です(^^)b
究極のベタ砥ぎですね! これに一回だけ糸引入れたら・・・欠けるのが軽減されるかと・・。



■重量感と柄の関係■
ちゃんと作った本焼はずっしりしてます。思ってる以上に重たい感じを受けるかも知れません!
本焼包丁にはよく黒檀柄が付いてます。ま、包丁自体が長く使えるから耐久性のある黒檀柄を採用
しているのか思われますが、重量バランスを保つためにも必要なのかもしれません。
本焼に朴柄を付けたら包丁側が異様に重たくなってしまったりします。

本焼ではありませんが、疾風にINOX柄(一位六角半丸柄)を付けたら、そのバランスの違いに
ビックリしました。このパターンは使用者によって好き嫌いが出来そうな感じがします(^^;
疾風も本焼並に叩いて製造しているので、同じようなフィーリングが生まれるのかも知れません!




■ちょっとやってみたい本焼実験■
日々にも書きましたが、薄い包丁(ふぐ引など)を本焼で作って重量感を上げる事ができないかと!
フグ引の厚みと幅で柳刃並みの重量感があったら、手が楽だと思うんですが。。。どうでしょう?
決められた厚みと幅に柳刃に使うくらいの鋼を叩き込むと・・・・。
そこまで極端な事は難しいかも知れませんが、出来たとしたら素敵ですねぇ〜〜。


■最後に!!■
これは絶対ではありませんが、水本焼の見分け方です!
包丁に波紋が入ってる場合の見分け方としては、波紋の波先が飛んでる物が水焼だろうと!
綺麗に波々してる物は、相当ラッキーな水本焼かそれ以外か・・(^^;
あんまり言うとどこかからクレーム?が来そうですが、波紋の先に花が咲くようにポポポっと
なってるのが確実に水本焼だと! 裏付けは、鍛冶屋さん3人から聞ききました。


■まとめ!■
上の事々を読んでいただければ解るのかと思いますが、一応まとめです!
本焼は水本焼を選んだ方が良いでしょう!結構高い買い物ですし、良い物ほど良い仕事をしてくれます。
波紋は花が咲いたような物をチョイス! 薄く研げるので研いで抵抗無い切れ味を堪能して下さい!
でも、一度でいいから糸引を入れて欲しいんですが。。どうですか?

これから本焼を買おうと思う方は、これらを参考にしてみてはどうでしょうか?
しかしながら、職人さんの意見などが大きく反映してるので〜〜その辺りは考慮してください。



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