2008年6月期「真空接合」
 



◆真空接合◆


そう、それは小さな宇宙です(^^)b

なんか変な出だしですが、今回は真空接合を紹介しようと思います。

前々から、低温で接合、火造、を行うと炭素が逃げないで鋭い切れ味
を出せる包丁になると紹介しています。
更に、しっかり叩いて締めれば粘りある包丁になります!

この叩くのはラボ(研究所)に任せて・・・。低温で接合に目を向けて
みようかと思います。


ハイリスク、ハイリターン!

低温で接合すると接合不良が出ます。
高温で接合すると溶解接合?確実に接合されます。

低温で接合すると炭素が鋼に残り鋭い切れ味になります。
高温で接合すると炭素が抜けて鋭い切れ味が出にくくなります。

この低温と高温! どんだけの差が出るねん!!!
っと思うかも知れませんが、使って研いでみれば、解る方なら
はっきりとその差を感じる事が出来ます。

たかが約100分の1である炭素量をどれだけ残すか!それだけの
ために、不良が出る危険を侵してまで低温で作業します。

それだけの事で、切れ味が変わるなら・・・使う人の事を思うからこそ
出来る作業であって、なかなかそんなリスクは負えません。。。

高いメリットがあるけど、高いリスクを背負わなければ、、、です。。


低温だと、アイケになり易いデメリットも・・・。
写真のアイケはゴミを挟んでのアイケで研げば取れる種類!


真空接合とその原理

この低温接合は、鋼と軟鉄が溶けて接合されているのでは無く、鋼と軟鉄
の間が真空になって接合されていると土井さんは言います。

最初は、「はて??」と思ったのですが、ガラスを水で濡らし、その上に
ガラスを置いたら剥がせませんよね・・・。この原理が真空接合です。

溶けて接合されると言う事は鋼が溶け出す温度なので炭素が。。と言う事に
なるのですが、、、確実に接合されるので、アイケやキズが出難い包丁に!
製品としての質は向上しますね!


なぜに、いまさら真空接合の話なのかと言うと、裏の地合いに出来る隙間!
が気になったからです。これは色々なお客さんから、裏の地合いは何故開いてる?
あれはどうなの? OKなの? 大丈夫? 沢山聞かれました。
開いてしまう理由は真空接合です。。

土井さんの工場で撮影している時に何気なく言った一言が・・。

「真空接合になってるから、刻印打ったら開きよる!」
「刻印打つ迄は、閉まってるんやで、しっかり付いてるんやけどな・・」

今まで、低い温度で接合してるから、くっついてないのだと思ってた・・。

 

汎用させない包丁は、軟鉄と鋼の間に刻印を打つ!
これは鍛冶屋が、そのメーカーの為に作った証拠でもある。
焼き入れしてから、鋼と軟鉄の境目に刻印を打つと鋼が確実に割れる。
(軽く打てば大丈夫か?)

溶けてなく、隣り合わせで真空の間に刻印を打ち込むのだから、開きますよね(^^;


先日、古い出刃包丁の修理を預かった。
30年前の包丁らしく、受け取って封を開けたら裏の地合いが開いてた。。
厚みもあって、中子もしっかりしていて、解ってる人が造った出刃である!
ここまで、しっかりしてるので裏の地合いが開いてた。。。
多分これは、切れ味を優先させた包丁なのだと・・・。


だ・か・ら。裏の地合いが開いてる包丁が良い包丁なんです!
って言っても、やっぱり開いてない包丁と並べられたら、開いてない方を買うのが
消費者の心ですね(笑) きっと、僕もそっちを買ってしまいます。


でも、地合いが開いてる包丁が、こう言う理由で、そんな切れ味品質を求めた
包丁である事を知っておいて欲しいのです!


メチャクチャ難しい問題ですが、不良が出ないように多くの鍛冶屋さんが高温で
やりだしたら、本当の深〜い意味での良い和包丁が日本から消えて行くような気がして。。。



裏表合わせて平面にしなくては刃が真っ直ぐならないからです。

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