2009年05月期「青鋼白鋼の掛かり」
 


鋼と白鋼、切れ味(刃の掛かり)違いに迫る


壮大なタイトルですが、個人的に集めた情報と感覚を元に切れ味に迫ってみました。
(白鋼は全て白二鋼と意味します。)



青鋼と白鋼がありますが、これまで散々ウンチクを重ねてきました。
これまで、切れ味についての違いは単に鋼材に配合されている元素の違いを紹介し
それが切れ味に与える影響を紹介してきました。 ←お堅いスタートです。


で、今回は、鋼材扱いのプロフェッショナルでもある鍛冶屋さんから聞いた事を元にして
青鋼と白鋼の切れ味違いに迫ってみたいと思います。


大まかな知識として、白鋼に混ぜ物をしたら青鋼になります。
この混ぜ物は、切れ味を長く保たせる、焼き入れし易くする効果があります。
人間が使い易いように作った合金です。便利な反面、失われる物があります。


それは、噛みつくような鋭さです。


青鋼を研ぐには技術が必要と言いますが、これは刃付けの仕舞い具合の見極めに尽きます。
白鋼に慣れ親しんだ人には、青鋼が何ともシャキっとしないイメージを持つと思います。
シャキっとしていないのですが、実はしっかり刃がついているのです。


シャキっとした状態を刃研ぎ終了のサインをしている場合、その状態を作りにくい青鋼では、
研ぎが出来て居ない状態とも判断してしまうかも知れません。 =刃が付かない、付きにくい!!


この感覚が気持ち悪いと言う方も居られますし、まったりとしたのが好きと言う方も居られます。



青鋼でシャキっとした感覚を得るには、根本的に研ぎを変えなくてはならないように思います。
それは、砥石の番手や相性であったり、刃付け方法(刃先の処理)です。



書いちゃうと、 相性や番手は鋼材との相性であって、白鋼と同じ砥石で同じ答えが出ない。
(多分出ない)と思います。青鋼には青鋼に合った砥石があるのです!

「それは何?」っとなりますが、砥石の相性は鍛冶屋と鋼材によって変化するので「コレ!」
って言いにくいのが実情です。「コレ最高っすよ!!」っと言っても、同じ答えが出ない場合があるので・・。!

ヒント 番手を変えるのが最速の方法。。より深く入るなら砥石を形成する砥材で合わせて下さい。




刃付け方法(刃先の処理)は、刃先の研ぎです。←そのまま・・・。

青鋼は粘りあるので、薄く研ぎ上げ易い!直刃好きな方ならば白鋼よりも薄い刃を付ける事
が出来ると思います。 どんなに硬度があっても薄く研げばシャキっと感が抜けちゃいます。
白鋼だと、ある程度研ぎをすればチリチリと刃が千切れてきます。限界点が低い!
この刃先をどのように研ぐか!でシャキっと感を得る事が出来ます。

シャキっと感を得ると書きましたが、所詮鋼材が別物なので、白鋼のようなシャキっと感は
得られません(^^; これまでの説明は水の泡??となるかも・・・。

しっかりとした刃を得られるだけかな〜〜 でも青鋼の方が白鋼より薄く研げるので参考に!
薄く研げるから良く切れ込むと言う理論もあるにはありますよね。


脱線したので、元に戻ります。


この切れ味の差を話すのには重要な事。


青鋼は工具用(大工道具、ノミ、カンナ) 白鋼は刃物用(庖丁、カマ、ひげ剃り)
根本的に、鋼材メーカーが目指して精錬している分類分けです。

白鋼は、庖丁になる為に?庖丁を作る為に作られた鋼材で、青鋼はノミやカンナを作る為に
作られた鋼材であります。

これを切れ味の話しに反映させるわけですが、そもそも庖丁とカンナは使い方(用途?切り方?)が違います。
ノミやカンナは刃に向かって縦方向へ切って行きます。刃物は横方向へ動かして切っていきます。
ブログに書いた切る方向の違いとは、この事です。

電子顕微鏡や分子構造を調べたわけではありませんので、物的証拠は何もありませんが、状況証拠?
あくまで憶測ですが、これが切れ味に大きく影響していると考えられるかな〜っと思います。


魚を捌く時、刺身を引く時、包丁を引きます(場合によっては押す!)ギコギコ動かして切ります。
ノミやカンナのように押し付けて切り込んでゆく事は無いと思います。

なので、白鋼は横方向に動かす庖丁に向いていると、横方向に動かすと良く掛かり鋭く切れ込むのが
納得出来るかと思います。


「おいおい! 俺は青鋼使ってるぞ!」っ言われる方が居られるかも知れません。


裏刻印で青鋼と入っているのは、ほとんどが「青二鋼」

鍛冶屋さん曰く、青二鋼は刃物鋼として使えるギリギリラインだと思うとの事です。
青一鋼になると滑りを感じ始め、青紙スーパーになると横方向への掛かりはどんどん失われる・・・。
(全て同じ砥石で研いだ場合、同じ人が使った場合です!)


青二鋼は一般的に差を感じにくい?
普通に使い易い鋼材であるかも知れませんが、青一鋼になると、切る技術を持っていないと使いこなせ
ないのでは無いかと最近感じています。横方向への意識と縦方向への意識、また、掛かる刃を付ける研ぎ
技術が必要になるのかと・・・。

この切る技術は、師範より教わっていますが、皆さんで色々考えてみて下さい。
「俺はそんなん関係なく青一鋼で切れてるで〜」っと言う方は、知らない間に切れるように調節出来てるのだと!

なんと言いましょうか、車の運転に近い感じですかねぇ?
色々考え無くてもスピードに合わせてカーブを曲がって行けるような・・・。ハンドル操作?(解りにくいデスか?)  



じゃぁ、ど〜して青二鋼や青一鋼は人気があるの?

っとなりますが、耐久性を重視したり切り口の美しさを考えたりが理由だと思っています。
白鋼に比べて研ぎ易い(まったりしているので砥石に絡みやすい?)のも理由かも知れません。
ステータスもあるのかも知れません。いつかは青二鋼!と思う方も居られるかも!
そんな方も、白二鋼に戻って来る方も多く居られます。
衝撃の告白「やっぱり白二鋼の切れ味が好きです。」っと!



すっごい白鋼ひいきな特集ですが、鋼材の特性を知る事で、これからの研ぎや刃付け方法、
砥石との相性や切り方にまで影響してくる事かな〜っと思ったので特集にしてみました。



この事をもっと深く掘ると枝分かれして大変な事になるので、この辺で終わります。


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