2009年11月期「時代の流れと包丁」
 


急に寒くなりました、お体の具合はいかがですか??
自宅の近所でインフルエンザに掛かった家庭がありましたがタミフルを飲んだら
スグに治ったとか。。。 でも命奪われるウィルスゆえ、、気を付けましょう!


さて、長くお待たせしました特集です。
この不景気に、あれやこれやと忙しくさせて頂きまして〜〜感謝感謝です。

この特集を書いている最中に、他の面白い事に出会ってしまって、そちらを記事に
したいなぁ〜っとチラホラしながら、ようやく辿りつきました。。。
これから先の包丁進化について書きました。読んで下さい! ←演歌の前説風に(笑)



「時代の流れと包丁」


時代の流れと共に、食文化やそれに伴う調理器具も進化してきました。

包丁で言うと、炭素鋼からステンレス鋼への以降が一つ大きな進化?変化
かも知れません。包丁を研ぐ砥石にしても、種類が増えて選択肢が増えました。
ステンレス鋼専用の砥石であったり、より効率良く研げる砥材などもあり、
包丁と砥石の相性を探すのも一つの楽しみ?苦しみ?になってきました。
また、衛生面も重視され抗菌仕様のプラスチック柄が出てきたりしています。


包丁で食材を切る時に必要な物といえば、まな板です。
このまな板も、木製まな板からポリまな板などに進化しています。
ソフトまな板などもあるので、まな板業界の方も包丁への配慮を頂いているのは
ありがたい限りですね!

しかし、どの調理場を見てもポリまな板が主流です。(保健所の指示もあるらしい)


包丁の切れ味低下(鋭さ低下)で一番の原因となるのはまな板との接触にあると
考えています。 魚の骨や皮、海苔などは別として、柳刃包丁など刺身を引く包丁
野菜を刻む包丁は、食材を切るだけで刃が弱る事は少なく、食材を切るだけで弱る
包丁は業務用としては成立しないと思うのです!

*常識を超えて薄く研ぎ込んだ包丁などは、良い包丁でも極端に切れ味が落ちる
 可能性はありますのでご注意下さい。



ポリまな板への対策としては、糸引刃などの研ぎ方法で耐久性を増す方法があります。
しかし、糸引刃など許せません!!ありえません!!と言う調理師さんに多く出会い
はじめた事もあり、別のアプローチで考え始めています。

また、包丁鋼材自体に耐久性があるステンレス鋼などを使う事でも対策出来るのですが
炭素鋼で直刃じゃなきゃ嫌だ〜〜 っと言う調理さんも多く居るわけです。

そもそも、ステンレス鋼で糸引無し状態で薄く研ぎ出すと刃が極端に弱くなる傾向が
あります。理由としては硬度が低いせいもあるのですが・・・。
硬度を上げたらエエやん!っと思うのですが、粘りがあるので研ぎにくい?
包丁になってしまうのです。。だから低めに設定してるのです!

高めにしてあるステンレス鋼もありますが、欠けた時の苦労をある人から聞いてから
万人向けでは無いな・・・っと思ったのです・・。 そういうリスクある包丁も好きですけど(笑)



炭素鋼での刃物造りは、従来通りの鋼材を使用しているので、木製まな板を使用して
いた頃と何も変わっていないように思われているかも知れませんが、鋼材は変化しな
くても、造る職人の技術が変化しています。

新しい事を試みる職人が造った白二鋼は、過去よりも現在の方が時代にマッチした
造りになっています。それは、包丁が最後に接するまな板との関係はもちろんの事、
冬も夏も同じ品質の包丁作りにも反映されています。



刃物鋼材は硬い方がシャキンっとした刃をつける事が出来ます。
HRCがどうのこうの〜っと言いますが、白二鋼の場合67HRCまで入ると言われています。
そこから、63HRC、62HRCに焼き戻しで硬度を落としているのが実際の所です。

こんな事を書くと、67HRCの包丁ってどんなの?って思うかも知れませんが、
落としたら粉々に割れるかも知れない包丁です。本焼包丁ならばガラスのような状態です。

先に書いたように、67だと刃がパリパリ欠けたり、折れたり割れたりするから、
焼き戻しで、硬度を落として良い頃合を見ます。

鋼の特性として、焼き戻しをすると粘りが出るので、それらの相乗効果で鋭く欠けない?
欠けにくい包丁が出来上がるわけです!

焼き戻しを完璧に行えた霞包丁(合わせ包丁)は極めて歪が起こりにくいです。


昔からの、経験と勘で行われてきたこれらの作業は、焼き戻しに限って頃合を狙える
ようになってきました。いわば、鍛冶屋が好きな硬度や粘りを設定できたりするわけです。

理論上での究極の包丁を狙って生み出せる事が出来る時代になってきました。
これが、面白いか面白く無いか!!は別問題です。。。

ただし包丁全部が均等に焼き戻しするので、包丁全体での硬度配分が効かないデメリットも!


上に書いた事を踏まえて究極の包丁と考えた場合、硬くて粘りのある包丁が道具として
の包丁としては究極であると言えます。

硬い=鋭い 粘り=長く切れる
鋭い切れ味が長く保てる包丁という事になります。


硬い包丁、粘りある包丁は、考え的に矛盾しています。
硬度が高い包丁に粘り(柔軟性)を出すなんて、変な話でしょ!



そのような包丁は既に出来ていて、酔心夢工房製品としてあれこれと動いているのですが、
これらの包丁は、今まで通りの炭素鋼包丁を研ぐ感覚で立ち向かうと鋼材の持つ最大限の
実力を発揮する事が出来ません!

同じ白二鋼でも、鍛冶屋によって焼きあがりの色が違います。 これが包丁の性格に大きく影響してきます。


その最たるものが、砥石との相性です。

炭素鋼のほとんどは、天然砥石(合砥)で研げば鋭い刃が付きました。
鋭いという感覚は、人それぞれで表現しにくいですが、感動するような鋭さを基準とした時、
新しい製法での炭素鋼の包丁は、良い答えを出してくれませんでした。

伝統的な製法から生まれる包丁から、現代に対応した包丁作りに向かうと、砥石もそれに
合わせなければならないのかも知れません。

人造砥石で研ぐとビックリするぐらい鋭い刃を得る事が出来ました。


そのようなる理由としては、粘りが原因です。
ポリまな板への対抗と、少しでも長く切れるようにする為、粘りを出した結果、刃先の見えない
カエリが、邪魔をするからです。 ステンレス鋼ならば、それなりの気持ちで研ぐのですが、
炭素鋼ともなれば長年の知識や経験も作用して、今まで通りの感覚で向き合ってしまうのです。


カエリがパリパリ取れにくい包丁は、長く切れる系の包丁と位置付けしています。
中々取れない分、中々切れ止まないと言う考え方です。

叩き込んで粘りを出した包丁はパリパリと取れません、チリチリっと後ろ髪を引かれるように
カエリが取れてきます。 焼き戻しで粘りをしっかり出した包丁は、カエリが糸のように線で
取れる事があります。 どっちがエエの??っと言われそうですが、どちらもエエです(笑)


包丁が好きで研ぐのが好きデス。。っと言う方ならば、早く切れ止む方がエエのかなぁ〜。。
(研ぐ機会が早く訪れれる〜♪)
出来るだけ研ぎたく無いなぁ〜って言うなら、新しい製法の包丁のがエエかも知れません。




この感じの包丁なら、本焼にすると非常に良いかも知れませんね!
ただし、気をつけないと薄く研ぎ過ぎてしまう可能性もあります・・・。
薄く研ぐ事が出来る包丁になる為です!


まさに、包丁と砥石の相性は、鍛冶屋と砥石の相性であって、作り手の意向を知ってないと
それに合わせた研ぎや砥石選びが出来ないように思います。 厳密にはその包丁の100%
を発揮することが出来ないです。



伝統は、昔ながらの製法を受け継いでこそ伝統!!っと思いたいところですが、時代に合わ
せた包丁作りをしていかなければ、衰退する運命にあります。
ステンレス鋼に押されている炭素鋼も熱心な職人によって進化しています。

どんな包丁もですが、砥石の相性さえ見つければ、ステンレス鋼よりも研ぎ易く鋭く切れる
炭素鋼は、まだまだ日本の伝統を引っ張れる要素はたっぷりあります。



2010年酔心夢工房は、こちらの包丁を形にする予定です。
これに関しては、包丁としては初めて??となると取り扱い説明書?的な物も用意して
鍛冶屋の意向、刃研ぎ屋の意向、酔心からのお薦め研ぎイロハ。。などを加えてみたいと
考えています。 そういう相性を探すのも楽しみなのかも知れませんが、刃物屋としての
提案はあってもエエと思うのです。




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