包丁の変色について。
”プロの調理師さんには常識かも知れませんが特集です。”
特に炭素鋼の包丁は、切る食材によって変色する事があります。
その原因は、魚や肉の脂による物と野菜などの灰汁が原因です。
サビのようにも思われる方が多いかも知れませんが、写真のような変色の場合
鋼材の表面が食材が持つ脂や灰汁で化学変化的な事になっている状態です。
写真は、葱とリンゴを切って変色させました。
どの食材が、どの鋼材と、どの様に反応するのかを全て調べる訳には膨大過ぎて
出来ませんが、脂っぽい魚や肉、灰汁の強い野菜(竹の子?葱?ワラビ?)など
は、変色を促進する作用があります。
これらを切った時、スグに錆びてくれば注意して使う事が出来るのかも知れませんが
ジワジワと迫ってくるの変色なので、知らない方は「錆びた〜」「不良品か?」っと
になる場合が多いようです。置いといたら錆びた(変色した!)感じでしょうか・・。
炭素鋼の包丁でレモンなどの柑橘系を切ると錆びる!ヤバイ!っと言うのは定説?
有名な話かも知れませんが、鋼材が変化するスピードが速いと言う事があっての事。
コレを切ったら、変色する!という経験を積むしか無いかもしれません。
特にこれから出てくる春の野菜は灰汁の多い物が多いとH調理師さんから聞きました。
しかしながら、この変色を錆びと呼べば錆びと言えます。変色系を黒錆びと呼ぶ方も居ます。
包丁にとって致命傷となる錆びは、赤錆び!これが出ると包丁(鋼や軟鉄)を侵食します。
赤錆は、奥へ奥へ鋼を蝕みながら侵食するので、見つけた瞬間に除去するべき錆びです。
黒錆(変色)は、表面だけで奥に侵食しにくい錆びなので、急いで取る必要が無いかも
知れません。この辺はユーザーの気持ち一つです。(長時間ほっといたら侵食も有る。)
この変色した包丁ですが、そのまま使ってもユーザーがOKならばOKです。
しかし、黒錆の中に一点でも赤錆の種があれば、侵食されます。
黒錆びに覆われて気が付かない事も多々ある事で、侵食が大きくなった時、ある日突然
スポッと開いた穴を発見する事もありますから、ピカピカにした方が発見し易いデス。
個人的には、変色といえど鋼がコーティングされてエエんちゃうんかな?とも思ったり
していましたが、数名の調理師さん方と、数名の包丁職人に尋ねた所。
「これは良しとしない」と言う答えが返ってきました。
特に調理師さん方は絶句。。 衛生的では無いやろ? との事。
お客さんと相対する調理場では、常にピカピカした包丁の方が良いと思います。
見ている人は、意外と手元を見ていたりするので。。。
変色した包丁の処理ですが、クレンザーで磨くしかありません。
よく、包丁研ぎの本などに、研ぎ終わったら野菜のヘタで磨きます!ってありますが、
砥石の当たらない部分の変色を取る作業なんだろうと、判断しています。
変色を最小限に抑えたい場合は、包丁を良く濡らしてから使う事です。
一見ピカピカで緻密に見える包丁も、ミクロでみれば隙間があります。それは鋼材の分子
レベルでもありますし、細かい研ぎ跡でもあります。
実際、ピカピカに研ぎ上げた包丁でも炭素系の物は、変色します。
当然、#1000などで研ぎ終えた包丁は、ミクロで見れば凹凸一杯なので、反応しやすい!
このミクロな隙間に水を入れてから使う事で、僅かですが変色スピードを抑える事が出来ます。
サヤから抜いて、そのまま使う方は少ないかと思いますが、一回水で濡らしてから!
もしくは使用中に水で濡らしながら使う事で軽減できます。
注)そこまでしてもでもやっぱり変色します。←ボクは変色させてしまいます。
ここまで炭素鋼と言ってきましたが、炭素鋼にも色々な種類があるわけです。
変化に強い順番に紹介すると、青鋼系→白鋼系になります。
製造方法別に言うと、本焼→霞となります。
青鋼は少しだけクロムが入っているので、ちょっと抵抗してくれます。
白鋼は、イケイケなのでモロに反応するように感じています。
本焼は構造が緻密なので、反応しにくい。
霞は、軟鉄があるので、この部分が特に変化しやすく、本焼ほど密では無いので反応が早い。
黒打ちの包丁などは、この黒サビを利用した物で、ステンレス鋼が無い時代には、黒いコー
ティングによって赤錆の発生を防いでいたのだと思います。先人の知恵ですね。
この変色は嫌だ!!!っと言う方には、銀三鋼かINOX鋼などがお薦めです。
銀三鋼もキツイ灰汁を受けると少し変色しますが、INOX鋼は変化なし!夢の鋼材です。
写真上が新品の薄刃を本刃付けして使った後、下は上田師範の鎌形薄刃。。10年目突入です。
刃持ちが良いのもあって、形状や幅が変わりません!もちろん変色も無いので、研ぎ減らす事も
無く、手に嵌った形になれば、ずっと同じスタイルで切る事が出来ます。
注)INOX本焼ですが、霞ッシモにしています。達哉の仕業です、、、貼り付きテストの為に霞ませてみた当時のまま。。
炭素鋼のサクサク切れるあの感じは最高!ですが、メンテナンスを考えると銀三鋼かINOX良いです。
今回は、「え〜〜錆びたやん!」っと言うショックな思いをしない為の特集でした。
炭素鋼の包丁は、変色する!それが普通です。 驚かないで下さい!!
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